
1. 合理的配慮とは?
合理的配慮とは、障害のある人が健常者と同じように働けるよう、企業が必要な調整やサポートを行うことを指します。これは、2016年に施行された「障害者差別解消法」によって義務化され、企業が障害者の雇用において考慮すべき重要なポイントとなっています。
合理的配慮は、「過度な負担を伴わない範囲で行うこと」が求められます。つまり、企業側にとって極端に困難な対応を強いるものではなく、可能な範囲で障害者が働きやすい環境を整えることが求められています。
弊社では、障害をお持ちの方のマネジメントのサポートをしておりますが、入社前に合理的配慮事項をご本人とすり合わせいたします。
弊社は、全国の就労移行施設(障害のある方や難病の方の就職・復職を支援するサービス)の皆様と連携しておりまして、合理的配慮事項を確認する場に、必ず事業所に勤務されている支援員の方が付き添われます。
ご本人だけでなく、普段から障害をお持ちの方と接しられている支援員さんの目線から障害特性を伺い、入社後のすれ違ちを減らすようにしております。
2. 合理的配慮の具体例
企業が実施すべき合理的配慮には、以下のようなものがあります。
(1) 身体障害者への配慮
職場のバリアフリー化:車いす使用者のためのスロープ設置、エレベーターの確保、トイレの改修など
作業環境の調整:高さ調整可能なデスクの設置、障害に応じた椅子や設備の提供
移動時のサポート:通勤ルートの配慮、障害者用駐車場の確保
(2) 視覚障害者への配慮
点字・音声対応の導入:エレベーターや社内案内に点字を追加
PCソフトのカスタマイズ:スクリーンリーダー(音声読み上げソフト)対応の業務システム導入
書類のデジタル化:読み上げ可能な電子文書の活用
(3) 聴覚障害者への配慮
筆談やチャットツールの活用:会話が難しい場合のコミュニケーション手段を確保
手話通訳・字幕付き動画の提供:研修や会議時の情報提供の充実
光や振動による通知:電話や緊急時の対応をサポート
(4) 精神・発達障害者への配慮
業務内容の明確化:仕事内容を分かりやすく整理し、細かく指示を出す
柔軟な勤務体制:短時間勤務やテレワークの活用
ストレス軽減の工夫:静かな作業スペースの確保、休憩時間の配慮
相談窓口の設置:メンタルヘルスケアの支援体制を整える
3. 合理的配慮の進め方
(1) 本人との対話を重視する
合理的配慮を提供する際に重要なのは、「障害のある本人がどのような配慮を必要としているか」を直接確認することです。一方的な配慮ではなく、本人と話し合いながら最適なサポートを決定することが求められます。
(2) 社内の理解促進
障害者が働きやすい環境を作るためには、周囲の理解も必要です。社内研修を実施し、合理的配慮の重要性や具体的な事例を共有することで、職場全体の意識を高めることができます。
(3) 費用負担を軽減する助成金の活用
企業が合理的配慮を進める際、コスト面での負担が気になる場合もあります。厚生労働省や各自治体では、障害者雇用に関する助成金制度を提供しており、職場環境の整備にかかる費用など一部補助する仕組みが整っています。
※助成金に関しては改めて解説記事を書きたいと思います。
4. 企業にとってのメリット
(1) 多様な人材の活躍促進
合理的配慮を進めることで、障害者だけでなく、すべての従業員が働きやすい環境が整います。これにより、多様な人材の能力を引き出し、企業全体の生産性向上につながります。
(2) 企業のブランド価値向上
障害者雇用に積極的に取り組む企業は、社会的評価が高まり、CSR(企業の社会的責任)活動としての価値が向上します。採用活動においても、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する企業として、優秀な人材の確保につながる可能性があります。
(3) 法的リスクの回避
障害者差別解消法に基づき、合理的配慮を提供しない場合、法的な問題に発展するリスクがあります。適切な対応を行うことで、企業の法令遵守を強化し、トラブルを未然に防ぐことができます。
5. まとめ
合理的配慮は、障害者雇用を推進する上で不可欠な要素です。企業が適切に対応することで、障害者が能力を発揮しやすい環境が整い、結果として企業全体の成長にもつながります。今後、障害者雇用に関する法改正や支援制度の変化に注目しながら、積極的に取り組んでいく必要があるでしょう。
参考サイト:厚生労働省
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